ドリップコーヒーを淹れる朝、
ふと浮かんだ旅の思い出や、
その日の気分をそっと綴っています。
#033満開の大桜、春のよろこび
広町に、大桜がある。
この地のシンボルになっている。
満開との情報。
ご近所の知り合いと鑑賞会。
山道を、休み休み歩くこと三十分。
ようやく、たどり着く。
一年ぶりの大桜。
樹齢は二百年らしい。
桜が多く咲く広町で、
まるで主の様な存在だ。
もともとは薪を取るために、
人が植えたものらしい。
聞いた時は、やや興ざめした。
しかし、それが、今では自然の一部となり、
広町の象徴になっている。
人もまた自然の一部。
だと思えば、どこか納得。
大きくて、一眼レフのカメラに収まらない。
枝の一部は朽ちているが、
上の方は見事に満開だった。
今年も、この桜に会うことができた。
感謝、そして幸せな気持ち。
今日は、初めてウグイスの鳴き声を聞いた。
春だ。
空はよく晴れていて、
空気が美味しい。
コーヒーの後の大桜は、
僕の気持ちも、春にしてくれた。
今日の至福度は、大「至福」です。
2026年3月29日
晴れ
#032今日は、少しだけ
今日のダイアリーは、少しだけ。
おとといのダイアリーで、
コーヒーを飲むときの温度は測らないと書いたけれど、
少し気になって、今日は測定。
62度から55度くらい。
そのあたりが僕の舌にはちょうどいい。
それでも、
七里ガ浜キャビンの豆とCAFECのペーパー、
ドリッパーで淹れたコーヒーは、
冷めても美味しい。
以前、業界の方から聞いたことがある。
バリスタのコンペでは、
冷めたコーヒーの味も審査するそう。
僕は冷めたコーヒーに少しミルクを加えるのが好き。
また違った美味しさになる。
今日は一つ失敗した。
最後のドリップを少し長く試してみたら、
えぐみが出てしまった。
やはり天使の分け前は、
きちんとあげないといけないらしい。
欲は禁物。
そんなことを思いながら、
今朝もコーヒーを飲む。
今朝の至福度は、中「至福」
2026年3月28日
晴れ
#031 トスカーナからウンブリアへ
フィレンツェから、鉄路で南へ。
トスカーナからウンブリアへの旅だ。
そしてアッシジに到着。
山の斜面に広がる小さな町。
タクシーを降り、
スーツケースを引きずってホテルへ向かう。
子どもたちが、じろじろ見てくる。
日本人など、ほとんど来ないのだろう。
歩いて聖フランチェスコ教会へ向かう。
チマーブエの絵に会いに行きたかった。
ルネサンスに惹かれるにつれ、
その源流が見たくなった。
あった、荘厳の聖母。
その美しさには感動した。
でも、 あれ、あんまり上手くないんじゃない?
正直、そう思ってしまった。
フィレンツェで観たルネサンスの絵に較べ
まだ、技術的に未完成であるように見えた。
一瞬ためらった。
でも、思った。
そうか、これが源流なんだ。
僕が観ている絵は、
レオナルドより200年も古いんだもの。
そう思うと、なんだかとても納得。
あらためて見返すと、
その絵が、とても初々しく感じた。
何年か後、
アッシジは大きな地震に見舞われた。
聖堂は崩壊し、多くの犠牲者も出た。
胸が痛んだ。
その後ずいぶん経って、
時間をかけて修復されたというニュース。
嬉しかった。
今日も、ドリップコーヒーを淹れる。
コーヒーの心地よい苦みは、
かつての記憶を蘇らせてくれる。
夕暮れの丘の静けさと、 チマーブエのマリア。
いまでも、あのウンブリアの地を思い出す。
今朝の至福度は、上「至福」です。
2026年3月27日
晴れ
#030 僕の湯温
コーヒーの豆をミルで挽く。
と言っても、ミルはさぼって電動。
アバカフィルターを、
有田焼ドリッパーにセット。
しばらくすると、
ケトルのお湯が沸騰。
蓋がコトコト鳴り出すのがサインだ。
沸騰させたお湯をツバメプロに移すと、
ちょうど湯温が10度ほど落ち着く。
蓋を開けたままTANITAの温度計を差し込み、
少しだけSNS。
適温あたりまで下がるのを待つ。
温度計を取り出して蓋を閉める。
蒸らしの準備完了。
最近、抽出時のお湯の温度について、
少し試行錯誤を続けている。
CAFECの推奨は、深煎りなら83度。
他を調べると85〜90度という意見もある。
昨日は少し油断して82度になってしまい、
やや抽出度が低かった気がする。
90度は流石に高すぎるのではと、
取り敢えず躊躇。
ということで、
今日は85度で淹れてみることにする。
ところで、
淹れる温度も気になるけれど、
飲むときの温度も同じくらい大事。
さすがに無精して温度計は入れないが。
一口めを飲んだときの、
唇に触れる感じでなんとなく判断する。
昨日は、少し低めだったかも。
ということは、
やっぱり抽出時の温度は、
最低でも83度は必要なのかもしれない。
ところで、
そもそも抽出中に湯温が下がるんだから、
何度が適温か、なんてわからないのでは。
などと、色々考えながらやっている。
これも朝の楽しみ。
さて、僕の湯温、今朝はどのくらいかな。
今朝の至福度、中「至福」です。
2026年3月26日
雨
#029 アルバカーキからソコーロへ
数年前まで、
僕の家の靴箱には、
カウボーイブーツが3足あった。
Tony Lama、Justin、そしてNoconaだ。
これらは、かつて1年暮らした、
ニューメキシコの名残り。
成田から、ロス、アルバカーキへと空路で移動。
空港には、1人の男性が出迎えてくれた。
「シゲルさん?」
「はい」」
「ようこそ、家まで送るよ」
「ありがとう」
ニューメキシコの訛りだ。
ピックアップに荷物を載せ、座席に乗り込む。
ここから、25号線を南へ75マイル。
ひたすら砂漠の道をゆく。
しばらくすると、
Monitored by Aircraftの標識。
警察の飛行機がスピード違反を見守っている。
こんなの、はじめてだ。
制限速度は55マイル。
アップダウンはあるものの、
ほとんどまっすぐで単調な道路が続く。
景色は西部劇の映画そのもの。
窓の景色に飽きた頃、
ようやく、この先ソコーロの標識が。
1時間あまりで、家に到着。
一人になる。
冷蔵庫を開けると、バドワイザーが数缶。
タブを開け、
キッチンの椅子に座って一口。
かなり遠くまで来てしまったなあ。
あの時感じた、寂しさは
今でも心の奥に残っている。
翌日は近くのセーフウエイへ。
まずは食料とコーヒーを調達。
コーヒーは、挽き売りのパック。
水はミネラルウオーターを使う。
家に戻り、コーヒーメーカーに粉をセット、
スイッチをオン。
しばらくすると、
ぼこぼこ言いながらコーヒーが出来る。
そして飲む。
薄いけど、うん、まあいけるかな。
アメリカンだから、いくらでも飲める。
一年後、日本に戻ると、
飲んだコーヒーがやけに濃く感じた。
アメリカ風のステーキハウスを探し出し、
何杯もおかわりしたものだ。
これも、僕の、なつかしいコーヒーの思い出。
今日も、ドリップコーヒーを淹れる。
苦みが、心地よく喉を通り過ぎていく。
今日の至福度は、中「至福」ぐらいかな。
2026年3月25日
曇り
#028 メディチ家の息吹
若くして行った、フィレンツェ。
サンタ・マリア・ノヴェッラ駅に降り立つ。
まだ今ほどの人混みではなかったと思う。
ホテルにチェックインし、すぐに街へ。
そこには15世紀メディチ家の息吹。
ロレンツォとジュリア―ノも、
歩いていたのだろうな。
ウフィッツィ美術館で、
ボッティチェッリの「プリマヴェーラ」に向かう。
何という優美さ。
しばし歩くと、
サンタ・マリア・デル・フィオーレ。
そしてジョットの鐘楼。
壮大さと華麗さに、
肝を抜かれる。
川を渡ると、
ベルヴェデーレの丘へ続く坂道。
トスカーナの、
完璧なまでの田園風景が広がる。
糸杉が連なり、
美しい家々が建っている。
屋根は赤、壁は白、窓枠は緑。
イタリアの色だ。
あまりの好きさに、
後年、自宅の庭にも糸杉を植えようとした。
でも、品種が異なり、似ても似つかぬ姿に。
シニョーリア広場のカフェで、
友人とエスプレッソ。
小さなカップから洗練されたイタリアの苦み。
目をつぶれれば、
フィレンツェの、数えきれない思い出が。
目を開けると、西鎌倉。
外は、晴れ。
今日も、ゆっくりとお湯を落とす。
僕のドリッパ-にも花が咲く。
うん、いい感じ。
今日の至福度は、大「至福」です。
2026年3月24日
快晴
有田焼の作品も、是非ご覧になってみてください!
#027 静かな月曜日、外は3月の雨
昨日は親しい友人との宴。
美味しい海の幸をつまみながら、
美酒を戴いた。
今朝は、やや寝不足気味で起床。
外は3月の雨。
静かな月曜日の始まりだ。
広町の山には、
ところどころ山桜が咲き始めている。
このままいくと、
3月末には、
大桜が満開になりそうかな。
雨が静寂をつくっている。
鳥の声は聞こえない。
静寂の中でたっぷりとコーヒーを淹れる。
雨の日のコーヒーは美味しいと言われるけれど、
うーん、どうだろう。
少し苦みが強いかなあ。
昨日の美酒に、舌も胃も少々疲労気味で、
正直よくわからない。
この雨の日の静けさは、日本独特だと思う。
静寂と、少し苦めの一杯のコーヒーが、
心を穏やかにしてくれる。
何よりの贅沢だと思う。
今朝の至福度は、中「至福」かな。
2026年3月23日
小雨
#026 アルハンブラのモザイク
ずいぶん昔のこと。
一週間をかけて、スペインのパラドールを巡った。
最も印象に残っているのは、
やはりアルハンブラ宮殿。
宿泊は、
サンフランチェスコ修道院だったパラドール。
最高の幸運に恵まれた。
宮殿の美しさは、いまさら言うまでもない。
偶像を持たないイスラムの世界は、
無数の緻密なモザイクで満たされていた。
当時は、アブダビ生活に少し疲れていた頃。
そんな僕ですら、
この繊細な美しさに、心を強く揺さぶられた。
レコンキスタの終焉まで、
ヨーロッパの地に長く息づいた文化だ。
近くの食堂で頼んだガスパッチョは、
夏の体に心地よく、
エスプレッソの鮮やかな苦みと甘みは、
旅の疲れをゆっくりとほどいてくれた。
僕が、コーヒーの苦みを好むようになったのは、
あの頃だったのかもしれないなあ。
そんな遠い記憶に思いを馳せながら、
今日もコーヒーを淹れる。
今日は、少しお豆が多すぎて苦み強し。
うん、それもいい感じ。
今朝の至福度は、上「至福」です。
2026年3月22日
晴れ
#025 天使の分けまえ
昨日の反省を胸に、
今朝は撮影無しでドリップに集中。
湯温は83度。
30秒蒸らして、静かに右回りの円を描く。
丁寧に回しては止め、回しては止め、
1ドリップごとに意識を集中する。
トータル4分。
最後の30ccは、「コーヒーの神様」へ献上。
あえて出し切らずにドリッパーを外す。
ウイスキーでいえば、天使の分け前だ。
一番美味しいところだけをいただくための、
僕なりの儀式。
功を奏して、
出来上がりはかなり完璧に近いぞ。
心地よい苦みの奥に、
透き通るようなクリーンさと、
微かなフルーティさも。
飲み終えてしばらく経っても、
喉の奥に、苦みの余韻が残る。
抽出が決まった日は、
心底から気分がいい。
西鎌倉は晴天。
今朝の至福度は、特上「至福」です。
2026年3月21日
晴れ
#024 ドリップの神様はちゃんと見ている
抽出中の撮影に気を取られ、
ドリップがおろそかになってしまった。
CAFECの抽出法は、
浸透圧を味方につける繊細な作業。
丁寧に、丁寧に。
一周ずつ回しては止め、回しては止め。
リズムを崩してはいけない。
けれど今日は、
写真を撮ることに気を取られ、
そのリズムを乱してしまった。
この程度なら大丈夫だろう。
そんな甘い考えを、
ドリップの神様はちゃんと見ている。
いつもの心地よい苦みに加え、
えぐみが顔を出してしまった。
コーヒードリップは、実に正直。
ドリップ道の精神を忘れたものには、
その見返りが、如実に返ってくる。
うーん、反省。
明日はしっかり向き合います。
今朝の至福度は、小「至福」です。
2026年3月20日
曇り
#023 たかが紙、されど紙。
一枚のペーパーフィルターを取り出す。
CAFECのアバカフィルター。
もう10年、僕には欠かせない相棒。
この紙は、両面とも細かなしわしわ構造。
Two-side Crepeだ。
たぶん世界中でCAFECだけ。
このしわが、粉の目詰まりを防ぎ、
お湯が、すこぶるスムーズに通り抜けていく。
アバカとの出会いで、
僕のドリップコーヒーは劇的に変わった。
雑味が消え、
透き通る、すっきりとした味わいに。
直径6ミリのお湯を、慎重に落とす。
お湯はコーヒーのうまみだけを引き出し、
心地よい音を立てて落ちていく。
とても爽やかな音。
たかが紙、されど紙。
アバカフィルターは、
ドリップコーヒーの名脇役だ。
今日も、うまく淹れられた。
コーヒーが美味しい。
今朝の至福度は、上「至福」です。
2026年3月19日
曇り
#022 モスクワは春の素振りだけ
三月のモスクワ。
暗闇の朝が、少しずつ明るくなる。
かすかに、長い冬の終わりを期待させる。
けれど、気温は上がらず、
春の素振りだけ。
いっそ夏が来るまで、
ずっと冬のままでいいよ。
そんなことを思い、
意地悪な気候をうらむ。
モスクワのオフィスではネスプレッソ。
苦みで脳を刺激する。
添えられたチョコレートで糖分を補う。
それでも、なかなか気分は上がらない。
西鎌倉の3月。
窓の向こうには、春の気配。
あの頃にはなかったワクワク感で、
今日もドリップコーヒーを淹れる。
そして、口に運ぶ。
美味しい。
気分が上がる。
湘南の春は幸せを運んでくれる。
今朝の至福度は、上「至福」です。
#021 広町に春の気配
窓の向こうに広がる広町の山が、
ピンク掛かってきた。
桜のつぼみだろうか。
三月半ば、
まだ寒い日もあるけれど、
季節は少しずつ春に向かっている。
春になると、
ウォーキングがてら、ときどき広町を歩く。
そろそろ、そんな季節が近づいてきた。
桜が咲くのも待ち遠しい。
鶯の声も、もうすぐ聞こえるだろう。
広町の空気は酸素がたっぷりで、
深く吸い込むと気持ちがいい。
まるで巨大な酸素ボンベだ。
午後は晴れそうだ。
今日、行こうかな。
そう思いながら、ドリップコーヒーを淹れる。
そして、口に運ぶ。
今日もなかなか美味しいぞ。
今朝の至福度は、上「至福」。
2026年3月17日
曇り
#020 アンニュイな朝もある
昨日、WBCは敗戦、クラス会ランチで少し飲みすぎ。
今朝は少しぼんやりして、気が入らない。
週末に切らしていたグアテマラを手に入れたので、
ダークローストに少しブレンドしてミル。
右回りにハンドドリップ。
いつもどおりに淹れられた。
七里ガ浜キャビンで、
おまけでもらえるベルメーレンのクッキー。
血糖値コントロール中の僕には
禁じ手なのだけれど、
週に一度のご褒美。
ブラックコーヒーの苦味と、
クッキーの甘みがよくマッチする。
お天気も曇りで、アンニュイな朝は、
一杯のブラックコーヒーが
少しだけ脳を刺激してくれる。
さあ、元気を入れなおして、
今日も良い一日にしよう。
今朝の至福度は、中「至福」。
2026年3月16日
曇り
#019 アブダビの赤い砂漠
砂といえば、もう一つあった。
アブダビからドバイへ向かう途中に、
赤い砂漠が広がっている。
ルブアルハリ砂漠の北端だ。
赴任に慣れてきた頃、
気分転換に、車でドバイに向かった。
その途中、
右手に広大な赤い砂漠が見えてきた。
砂漠は、生きていると聞いた。
はるかかなたまで続き、波打ち、形を変え、
地平線は決して平らになることは無い。
何か、巨大な箱庭のようだ。
まるでダリの絵を観ているよう。
アブダビの厳しい生活の中で、
あの、赤い砂漠への感動は忘れない。
この砂もリビングに飾ってある。
実際に見直してみると、レンガ色に近い。
でもそれは、
アラビアの苛烈な太陽の下で、真っ赤に輝いていた。
そんな感動を振り返りながら、今日もコーヒーをドリップ。
まあまあ上手く淹れられたかな。
今朝の至福度は、上「至福」。
2026年3月15日
快晴
#018 アブダビの白い砂
自宅のリビングに、
小さな瓶に入った砂が置いてある。
アブダビの砂だ。
ウーライトと呼ばれる砂で、
よく見ると、
焼いた、たらこをほぐしたように粒が丸い。
世界でも、二、三か所ほどでしか見られない砂らしい。
サンゴや貝が細かく砕かれ、海水に洗われて、
長い時間をかけて丸くなったものだ。
アブダビの海岸は美しい白い砂浜。
砂が白いので、
遠浅の海は、透き通るようなエメラルド色に美しい。
ただ、海の水は生暖かく、海水浴には不向きのよう。
水に入りたい時は、ホテルのプールへ行く。
そこでは水が冷却されていて、とても気持ちがいい。
軽く泳いで、ロビーで休んでいると、
カンドーラ姿のおじさんがポットを持ってやってくる。
「ガーファはいらんかね」
淹れてもらったガーファは、スパイスの香り。
一口飲むと、すっと気持ちが落ち着く。
おじさんに「シュクラン」とお礼を言う。
そんなアブダビの、夏の休日を思い出しながら、
瓶の中の砂粒を眺めている。
手元には、いつもの朝のコーヒー。
今日の一杯も、美味しく淹れられた。
気分がいい。
至福度は、上「至福」です。
2026年3月14日
晴れ
#017 右回りvs左回り
コーヒーは、
左回りにかき混ぜた方が
右回りより美味しくなる、
という話があるらしい。
調査で出ているというから、驚きだ。
分子構造には右型、左型があることは知っている。
これと関係があるのかとも思ったが、
どうやらそういう話でもないらしい。
それを考えると、
ハンドドリップをするとき、
いつもどちらに回せばよいのか迷ってしまう。
元理科系の浅知恵で考えると、
右に回してお湯を注げば、
粉の中で、お湯の流れは左回りになるのではないか、
などと想像する。
試しに両方やってみた。
右回りの方が少し美味しいような気もする。
いや、たぶん気のせいだろう。
どちらにしても、
CAFECの抽出法では
粉をあまり動かさず、
静かにお湯を落としていくことが大事だ。
そんなことを考えながら、
今日は右回りでドリップしてみた。
美味しいコーヒーが淹れられた。
明日は、左回りでやってみようかな。
至福度は、上「至福」です。
2026年3月13日
曇り
#016 3・11
今日は3月11日。
東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を祈り、
静かに手を合わせます。
2011年は、私にとって忘れることのできない年。
この震災の秋に、母が永眠したからだ。
地震の瞬間、私はお台場のオフィスにいた。
ただならぬ揺れが、長く続いた。
しばらくすると、
近隣のビルから黒煙が上がり始めた。
消火作業はなされない。
夜には、千葉のコンビナートで火災が発生した。
窓の向こうに見える大きな火柱は、
まるで映画のワンシーンのようで、
逆に現実味がなかった。
その夜、私は、同僚と共にオフィスで夜を明かした。
ニュースが伝えられるに連れ、被害は益々大きくなっていく。
眠ることはできなかった。
やがて夜が明ける。
ゆりかもめが動き出す。
とにかく帰ろうと、新橋に出て南へ向かう。
東海道線は超満員。
何本も電車を見送った。
やっと横浜までたどり着いたが、
そこから先は電車が動かない。
駅を出てやむを得ずタクシーの列に並んだ。
思ったより早く順番が来て、
西鎌倉まで帰ることができた。
自宅は、意外にも何の被害もなかった。
棚から物ひとつ落ちていない。
西鎌倉は地盤が固いのだ。
寝たきりの母は、
介護ヘルパーさんのおかげで
普段と変わらぬ生活をしていた。
認知症だった母は、
震災のことにも気づいていない様子で、
ただ笑顔で、
おかえりなさいと私を迎えてくれた。
私は、心から安堵した。
あの日の記憶は決して消えることは無い。
あらためて犠牲になられた方々に、
ご冥福をお祈りします。
合掌。
2026年3月11日
うす曇り
#015 アラビア湾のリグ
壁に、昔働いた掘削リグSEDCO160の写真が掛けてある。
朝のコーヒーを飲みながら、
ふとアブダビのことを思い出した。
隔週でやってくる現場勤務は、なかなか過酷だった。
毎週火曜日はクルーチェンジの日。
アブダビ空港のヘリポートから海上油田へ向かう。
ヘリはベル社製の212機種。
横ではUAE空軍のミラージュが轟音をたて、
発着訓練をしている。
ヘリは海の上を飛び、
一時間ほどでリグが見えてくる。
機体がゆっくり旋回し、ヘリポートに降り立つ。
毎回ながら、ほっとする瞬間だ。
リグは二十四時間稼働。
僕の仕事は現場の監督。
取れる睡眠は細切れで、まともに体は休めない。
ここではガーファを淹れてくれる人はいない。
飲むのは、コーヒーメーカーの
薄いアメリカンコーヒーだけ。
アラビア湾の海は穏やかだ。
エメラルド色の海が、どこまでも広がっている。
その海を眺めながら、一週間の仕事が始まる。
次のクルーチェンジの日を楽しみにしながら。
ふと目を戻すと、
手元にはフラワードリッパーで淹れたコーヒー。
今日も美味しい。
そして、平和だ。
至福度は、上「至福」かな。
2026年3月10日
お天気は曇り、少し晴れ間あり。
#014 ドリッパー占い
ちょうど十年前から、
CAFECのフラワードリッパーを使っている。
円錐形のフォルム、
側面と底面を丸く繋ぐハンドル、
そして内側に刻まれた花弁形の溝。
数あるドリッパーの中でも、
一番美しい形状のドリッパーではないかと、
僕は思っている。
お湯を注ぐと、
挽いたコーヒー豆にゆっくりと染み込み、
外側へと広がっていく。
その拡がりが、
内側の溝に沿って、花の模様をつくる。
これが、実に美しい。
僕はこれを、自分流の「占い」にしている。
花弁の模様がきれいに出た日は吉兆。
今朝はどうかな。
見事に吉兆。
コーヒーも、うまく淹れられた。
味も上々。
至福度は、上「至福」です。
2026年3月9日
晴れ
#013 平和な朝
三日ぶりに、今朝のひとりごとを書く。
今日は何か特別なことは書かない。
湘南の穏やかな冬晴れの静かな朝だ。
世界に目を向ければ、
ウクライナ、パレスチナ、イラン、
紛争のニュースが絶えない。
僕がかかわった国も含まれている。
そこには、日常を失った多くの人々がいる。
命を落とした人もいる。
それを思うと、
こうして穏やかな朝を迎えられる日本の平和が、
心にしみる。
何も起こらないことの幸せ。
それが如何に貴重なことか。
いつものようにハンドドリップでコーヒーを淹れる。
今日も美味しいコーヒーを淹れることができた。
そして味わう。美味しい。
きっと、これ以上の贅沢はないのだろう。
至福度は、中の上「至福」かな。
2026年3月8日
快晴
#012 湘南の冬
日本の、ことさら湘南の冬の気候は、
世界でも最高ではないかと思う。
気温は寒いといってもプラス。
空はどこまでも澄み、
陽の光は部屋の奥まで差し込んでくる。
十年住んだモスクワの冬は暗く、寒く、そして長かった。
春がなかなか来ない。
長い冬は、人の心を少しずつ削っていった。
湘南の陽の光は部屋をポカポカにしてくれる。
肩も、腰も、膝も、すこぶる調子がいい。
今日は、そんな典型的な冬晴れの朝。
気分も自然と上がってくる。
日本に住む幸せを感じると、コーヒーの味も格別。
今日も美味しい。
至福度は、上「至福」です。
2026年3月5日
快晴
#011 豆の切れ目
僕は週に一度、
七里のキャビンでコーヒー豆を買う。
ダークローストを200gか250g。
週によって異なる。
家に帰って、
瓶に豆を移し替えるのだが、
そのとき、必ず少しだけ古い豆が残っている。
きっちり計量して新しい豆を足せばいいのだが、
僕はそれがあまり好きではない。
新旧の豆が混ざるのが、落ち着かないから。
だから、
残った豆は使い切ることにしている。
そうすると、
おのずとその日のコーヒーはいつもより濃くなる。
苦味が少し強く、コクもさらに深い。
「豆の切れ目」の一杯。
いつもより濃い味のコーヒーは、
週一で訪れる、少し贅沢な楽しみ。
今日も、そんな日。
苦みが口の奥に広がる。
ここちよい。
今日の至福度は、上に近い「至福」かな。
2026年3月4日
晴れ
#010 僕のコーヒー史
1970年代、
お子ちゃまコーヒー。
ミルクと砂糖をたっぷり。
ブラックは苦くて飲めなかった。
1980年、
初めての異国、アブダビ赴任。
アラビアのコーヒー「ガーファ」。
coffeeの語源らしい。
ガーファを飲むとアラブ人の話は長い。
なかなか仕事に戻らない。
1983年、アメリカ赴任。
田舎の研究所はコーヒーメーカー。
アメリカンコーヒーは麦茶のよう。
がばがば飲んだ。
1988年、転職。
英国との接点が増え、自然と紅茶へ。
コーヒーとは少し距離を置く。
2005年、モスクワ生活。
オフィスではネスプレッソとチョコレート。
チョコの食べすぎで血糖値爆上がり。
2016年、円錐型フラワードリッパー。
透過式という抽出法。
その一杯は衝撃的。
ブラックコーヒーがうまいと思えた瞬間。
2022年 ダークロースト
友人の紹介で出会ったコーヒーキャビン。
酸味が苦手な僕には、ちょうど良い深み。
振り返れば、それぞれの時代にそれぞれのコーヒー。
僕も、コーヒーと共に少しずつ変わってきたのかな。
今日もコーヒーがうまい!
至福度は、上「至福」
2026年3月3日
雨
#009 七里ガ浜キャビン
毎週末の朝は、七里へのプチドライブ。
家を出発し、鎌倉高校前の踏切を越えて海沿いの道に。
若干の渋滞を抜け、
七里ガ浜の信号を左に折れ住宅街を少し進むと、
コーヒーキャビンに到着。
オーナーN氏は、友人の小中学校同級生で、
日本スペシャルティコーヒー協会の重鎮でもある。
毎週コーヒーの知識を指南してもらい、
ついでにご近所の話も聞く。
買うのはダークロースト。
去年からは、グアテマラも少し加えている。
僕流。
袋を開け瓶に詰め替えると、瞬間の香りと共に、
また一週間が始まる気分。
今やキャビンは、僕のライフラインだ。
至福度は、上「至福」。
2026年3月2日
曇り
#008 西鎌倉の水道水
深炒りのコーヒーには、硬水がよいと書いてあるけれど、
僕は、いつも家の水道水を沸かしている。軟水だ。
日本の水道水の上質さは世界でも有名。
西鎌倉に越してきたとき、戸建ての水の美味しさに驚いた。
集合住宅の貯水タンクを経る水とは異なり、
水道管から直接届く水は、どこかあまくまろやかに感じる。
コーヒーにミネラルウォーターを使おうかと思ったこともある。
けれど結局、水道水で十分だと気づいた。
日本の水に感謝。
今日は、切れていたグアテマラをダークローストにブレンドして、
いつもの美味しいコーヒーに。
今日の至福度は、中の上「至福」。
2026年3月1日
晴れ
#007 CAFECのビーカー
これまで使っていたCAFECのビーカー。
無駄のない円筒形の機能美に惹かれて選んだアイテムだった。
先日、ほんの一瞬の油断で手が滑り、割ってしまった。
んー、残念!少しだけ気持ちも落ち込んだ。
仕方なく、近所のスーパーで他社のコーヒーサーバーを購入。
形はありきたりで、正直、特別な愛着は感じないかな。
ただ、口が細く蓋が付いている分、香りと温度は保たれるから、
それはそれで、ちゃんと機能している。
今日はグアテマラが切れたので、
久しぶりにダークローストだけを挽いて抽出。
深みのある苦味と味わいは、思いのほか良かった。
至福度は、中「至福」。
2026年2月28日
2月最終日 お天気は晴れ
#006 父の命日
今日は父の命日。
中学生のときに亡くなった父。
あの時の寂しさは、
遠い記憶の中でまだうっすらと残っている。
その年の藤沢には三度の大雪が降った。
三度とも法事の日にあたっていたように覚えている。
雪が好きだったのか、それとも涙雪だったのか。
仏壇のモノクロ写真は、
今も優しく、時に厳しく私を見守ってくれている。
今日は晴れ。
陽の光を感じながら飲む一杯のコーヒーの幸せ。
父に感謝。
至福度は、大「至福」。
2026年2月27日
晴れ
#005 オデーサ
今日はコーヒーの話から少し離れて――
ウクライナの港町、オデーサのことを思う。
10年以上前、ウイスキー輸出の仕事で何度も訪れた街。
海に開けた美しい港と、穏やかな街並みが
今も記憶に残っている。
あのオデーサが、
4年前の2月24日から始まったウクライナ侵攻で、
間もなく爆撃を受け、破壊された。
爆撃後、
現地パートナーの友人としばらく連絡が取れず、
ようやく無事を知ったときには、
胸をなでおろしたことを思い出す。
海辺のレストランの記憶が、
いまもあの街の空気を静かによみがえらせる。
終わりの見えない戦争。
友の無事と、いつかまた、あのレストランで、
食事を共にできる日がくることを祈るばかりだ。
今朝のコーヒーは、抽出時間が少し短めだった。
至福度は、中「至福」ぐらい。
2026年2月26日
天気は、雨上がりの曇り空。
久しぶりの雨。
乾燥していた空気に、やっとやさしいお湿りだ。
本来ならうっとうしいはずなのだが、
今日の雨、気分はそれほど悪くない。
いつも使うフラワードリッパーは、
淹れた後に花弁の抽出跡が浮かび上がる。
きれいだ。
今日はしっかりと抽出時間4分を守れた。
きちんと守れると、気分がいい。
味もおいしいぞ。
今朝の至福度は、大「至福」。
2026年2月25日
雨
#003 アラビアのマグカップ
昨春に亡くなった友人Mの、
葬儀の返礼でいただいたアラビアのマグカップ。
あれから朝のコーヒーは、いつもこれ。
飲むたびに、
彼のにこやかな笑顔と、
共に闘った試合の記憶がよみがえる。
静かな一杯。
でも、心は少し温かい。
今日の至福度は、特上「至福」。
2026年2月24日
ウクライナ侵攻からちょうど4年
曇り空 昨日に続いて暖かい
#002 ちょうど83度
外は強い風。春一番のようだ。最高気温は20度。
ドアを開けると空気があたたかい。
今朝は、お湯の温度43度ぴったりで抽出を開始。
ちょうどのタイミングで淹れられると、少し嬉しい。
豆を目分量で挽いているので、
今日は少し濃い目になってしまう。
まあ、これもご愛敬かな。
深みはしっかりと感じられた。
春の風とともに、ゆったりとした休日がはじまる。
今日の至福度は、上「至福」です。
2026年2月23日 天皇誕生日 曇り
#001 今朝のひとりごと筆はじめ
今朝も、いつも通りのドリップから一日が始まりました。
やかんで沸かしたお湯をツバメプロに移し、
温度計が83度になるまで、しばらく待つ。
ドリッパーは、有田焼の手描きドリッパー。
豆は、七里ガ浜のキャビンで買ったダークローストに、
グアテマラを少しだけ足してミル。
湯の落ち方はまあまあ。
淹れ方も、味も、今日は“やや上”くらい。
でも、それくらいがちょうどいいかな。
静かで、いい朝。
今朝の至福度は、中の上「至福」ぐらいでした。
2026年2月22日 やや曇り